道幅1.5mほどの市道を下った所にその家はあった。
昭和44年に竣工した一軒家は当時の流行でもあった圧縮パルプによって建てられた家である。
市道から渡された回廊は、およそ3mほど延び、アリゾナ杉で建造された廊下はギシギシと音を立てるがいたって元気だ。
両脇が絶壁となっており、常人の歩行では心持たない。
崖から見下ろすのは太平洋。まるでバルパライソの夕日のような照り返しに赤く染められ、しかしとても風情の在る廊下だ。
見下ろすその家には...そう、1頭の「龍」が棲んでいた。
「臥龍」と称したその「龍」はいまは未だ深い眠りの中。
彼が目覚めるのはあと4000年後のことである。