土谷町:詩語篇
男は千葉の外房に近い土谷町というところに二階建アパートを2部屋借りていた。
一軒は仕事部屋だという工場や倉庫に囲まれた一角にあるものだが、もう一軒は右窓側に鬱蒼と茂った森林がある場所に建っており、目の前には倉庫のような建物、左側には幹線道路から続く横道が海まで通っている。
なぜそこにしたのかと男に尋ねると部屋から見える森林の中に小さな廃屋があるからだと言った。
その部屋には私も含めた昔馴染みの仕事仲間が集っているのだが、なにやらガチャガチャと人の出入りが激しく、遠慮した私は一旦その場を離れ、路線バスで30分ほどの隣町にやってきた。
夏だというのに空は暗澹としており空気も薄汚れ淀んでいた。
そう感じた私は急いでその場を離れ、再び男の家に向かうのだが…
到着した男の家はいつの間には見知らぬ人たちでごった返していた。
そこはまるで囚人を管理する刑務所のようだ。
しかし鉄格子やエリアを区切る鉄条網などは無い。
つまり自由にさまざまな人たちが出入りをしているのだが…
その人々は一様に悪人だった。
小悪党もいれば大罪人と思われる者たちもいる。
女性も多く訪れるのだが彼女たちが悪人なのかは定かでは無い。
やがて集う人たちはいくつかのグループに分かれていることがわかる。
到着したての私はまだどのグループにも属してはないが、馴染みの仕事仲間はもうその場にはいないので、とりあえず周囲の人たちに馴染むようにちょっとだけ媚びへつらう私であった。
やがて私はそこで大罪人であるヤクザの兄貴分(小柄だが無口。見た目はZOZOの前澤社長風)と知り合い、彼に一服のほうじ茶を淹れて振る舞うのだが、そのおかげで彼から不思議な信頼感を得て、弱っていく彼に最後の一服を淹れることとなる。
男の家の部屋はすでに大人数が集う集会場の様になっており、そこには食堂(うどん屋?)も開かれ、酒も振る舞われ、各々が自由気ままに屯している。